金時日記

日々の感動を書き綴る

なんでもおいしくする究極のスパイス


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今週のお題「ごはんのお供」

 

その昔、「マッドマックス」というバイオレンスアクション映画がヒットした。

何作か続いているがその人気を確たるものにしたのはマッドマックス2だろう。

 

映画の舞台は核戦争が起こった後の荒廃した世界で、僅かに生き残った人間たちが食料や水、燃料を奪い合い殺し合う、まさにバイオレンス丸出しの傑作。

登場する人物や衣装、車両といったものが独創的で

後に日本で大人気になったアニメ「北斗の拳」が、

このマッドマックスの世界観を取り入れているのは有名な話だ。

 

マッドマックスは80年代にヒットした映画だが、つい数年前もその続編が公開され、

これもたいそう話題になったほどだ。

 

だからそのバイオレンスなマッドマックスやらとご飯のお供と何の関係があんだよ、

となるわけですが、

凄くインパクトの強い作品でしたが、

その中でも僕的に特に印象に残ったシーンがありまして、

そこだけ かいつまんで紹介します。

 

 

主人公マックスは、相棒の犬と共に愛車インターセプターで荒野を彷徨っていたところ、怪しげな男に遭遇する。

その男はマックスをはめて、所持品を奪おうとするが逆にひっ捕らえられ捕虜に。

その男の情報で、近くに燃料を精製している集落があるが、

部外者を全く受け入れないという。燃料が欲しいマックスはその集落の様子を探るため付近の崖上から偵察することに…

 

 その崖上でマックスは双眼鏡で集落を偵察しつつ、

どこで手に入れたのかわからない缶詰めを取り出し食事をはじめる。

その缶詰めには犬のイラストがありドッグフードの缶詰めだとわかる。

このドッグフードの缶詰めをマックスが何ともうまそうに食うこと。

 

何というか、味わうのではなくワイルドにがっつくのだ。

その様子を物欲しそうに見つめる犬と捕虜の男。

マックスはドッグフードを食い終わると、カラの缶をポイっと捨てた。

すぐさまその缶に飛びつく犬と捕虜の男。

 犬は「ウゥ~」と喉を鳴らし、捕虜の男を威嚇しつつ

空き缶にへばりついた残りカスを舐めるのだった…

 

 

 その時僕が真っ先に思ったことは、

 

このドッグフード なんてうまそうなんだ!

この缶詰めのドッグフードを食べてみたい

今からコンビニに買いにいこうか

そう思えるほど、マジでうまそう!

 

でもちょっと待てよ、落ち着いてよく考えるんだ、

たかが犬の餌じゃねぇか なんでこんなにうまそうなんだ⁈

俺だけ?

俺がおかしいのか?

 

自分的にはマッドマックスのこのワンシーンをドッグフードのCMに使ったらバカ売れすると思うのだ、犬のみならず人までもが。

こんなデジタルなご時世です、ネットによる情報社会の波に乗ってしまえば、

 

#うますぎる犬缶

 

#ご飯のお供ドッグフード

 

#有名シェフお忍びドッグフード

 

#ドッグフードダイエット

 

といったハッシュタグが次々と現れ

常に次のトレンドに飢える現代人には、タピオカミルクティーの次はこれだろ!

とばかりにドッグフード缶詰めは瞬く間に世の食卓の新アイテムとなるのだ。

 

クックパッドにはドッグフードを使ったかんたんおいしいレシピが続々と配信され、

テレビはどのチャンネルも連日ドッグフード関連の話題を取り上げる。

そうするとたちまちドッグフードの買い占めが始まり、

ヤフオクなどで高額で取引される始末。

もちろん店舗では品薄状態になり入荷日には

ドッグフード缶詰を求める客で早朝から長蛇の列、

店の入り口には

「只今、ドッグフードは売り切れです 入荷日は未定です」の張り紙。

 

たまたまどこかの店舗に入荷するといった情報は瞬時に千里を越え、

他府県から自動車で前日入り 

入荷数50個に対して徹夜組を含む1000人以上が列をなすあり様。

当然あちこちでご近所トラブルが発生。

そして店舗では入場制限がなされ

「より多くのお客様にご購入いただくため、

    ドッグフードは一家族様おひとつとさせていただきます」となる。

 

ドッグフードを買うためだけにやって来たお客様も黙っていられない。

「遠路はるばる時間かけてガソリン代、高速代使ってドッグフードを買いにきたんだ、そのお客に長時間並ばせておいて、なんだその言い草は!」 と

一見正当に思えるとんでもない屁理屈をドヤ顔で声高かに訴えると

店内にはモラハラ、カスハラが吹き荒れる地獄絵図、

これでは現代版マッドマックスをインスパイアしそうでよろしくない。

 

出来ることなら人間たちが犬の餌を奪い合う姿を見なくていい

世の中であってほしいと願う。

 


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話がそれたが、なぜそれほどまでにドッグフードの缶詰めがうまそうに見えたのか。

1つは役者の食べ方がうまかったという理由。

主人公マックスのドッグフードのがっつき方だ。

マックスと言えばこれが出世作となったメル・ギブソンだが、やはりスターになる片鱗がこういうとこに出ていたのでしょうか、役者として食べたのか、いつもの食べ方なのかはわかりませんが、彼のあの食べっぷりはそれがドッグフードであることなど微塵も感じさせない素晴らしい演技で一見の価値ありです。

 

それを含めこのドッグフードの缶詰めをおいしく感じさせる一番の要因は、

環境ではないのか。

この映画の舞台設定である戦争後の荒廃し飢え乾いた見渡す限り茶褐色の大地。

 

店に行けば食べ物が買えるわけもなく、森に行けば果実がなっているわけでもない。

 生き残ったことが逆に不幸に思える酷い環境なのだ。

 

 そこにあって逞しく生き残ってくれた

「缶詰めドッグフード」のなんと有難いことか、

この環境下においてその価値は

どんな宝石をも凌駕することは何人も否定できないだろう。

 

 かの哲学者ソクラテスはこう言っている。

 

この世界にはどんな食べ物もたちどころに

美味しくする究極のスパイスがある。  それは空腹

 

これは疑いようのない真理だ。 

いかにおいしく食べるか、というのは

いかに飢えているか、というかことに他ならない。

 

僕もけっこうな時間を生きてきたので、たくさんのおいしいものをいただいた。

これさえあればごはん何杯でもいけちゃう、そんな一品いくつかあります。 

 ただ これってどれも空腹であることが条件としてあげられるのではないか。

 

僕はこの愛すべきご飯のお供たちをこれからもおいしく食べたいし、

我が人生の楽しみの一つにしておきたいのです。

そのために僕はこれ等のごちそうを食べるときは、

よりおいしく食べるために、なるだけお腹を空かせてから

いただくように心掛けています。 

 

 今日の夜はいいお肉で焼き肉するから、昼飯は我慢しよって、アレですアレ 

 

 うれしいことに

 空腹こそが食事をごちそうに変える魔法であるなら

 ご飯のお供はもっとおいしくなる可能性を秘めているといえる。

 

 

 

 

                         糸冬