金時日記

日々の感動を書き綴る

uber Eats配達員いざ参る‼ ⑦  都攻略編(3)

 

 

 

痛恨のダメージを食らいながら、諦めてなるものかと立ち上がり歯向かったばかりに

更に強烈な一撃を食らうことはよくあることで、

僕は地下街のロッテリアの一件で凹んだ気持ちのまま配達を続行した。

このままの気持ちで一日を終わらせるより、業務をいつも通りこなすことで

気持ちの乱れを整えることもあるからだ。

 

ただ後に思い返した時、

やはりあの時帰っていればよかったというのが正直な気持ちだろう。

 

その日初めてケンタッキーからのリクエスト。もちろんここは初めて行く店だ。

通りに面していない為初めてならわかりにくい立地で、

昔からの商店街といった感じで駐輪場もなく、

たくさんの自転車が店舗前に無造作に停められ、

ただでさえ狭い道路をなお狭くしていた。

 

uber Eatsの配達は登録している色々な食べ物屋さんの商品を配達する楽しさがある。

ファストフード、中華、弁当、カフェ、レストラン、スイーツ、ピザだって行く、

コンビニの商品も届ける。これからもっと色々な店の商品が増える可能性はある。

配達して気づいたのはファストフードの強さ

中でもマックの注文は断トツに多い。

店舗数が多いということもあるが、にしても圧倒的な強さだ。

 

僕もマックは好きで若い時は特に世話になったが

大人になるにつれ食べる機会は減っていった。

最近世間は健康志向だ、あまり健康的とは言えない、高カロリーで太りやすいと言われるハンバーガーは逆境にあるのかと思っていたが、

とんでもない思い違いだったのだと思い知らされる。

 

uber Eatsの配達でマックに行く機会が増えたことで、そのお客の多さに驚く。

土日祝などはマッククルーが気の毒になるほど、お客が群れを成している。

それに加えてuber Eatsの配達員の多いこと。

時間によってはお客より配達員のほうが多く待っていたりする。

またマックからのリクエストが多いことは配達員は知っているので

リクエストが来る前からマックの側で待機している配達員もいて

マック地蔵と呼ばれている。

 

 

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そもそもマックはほとんどの店舗がデリバリーを展開していて

宅配クルーもバイクもある、なのにその上uber Eatsもやるとなると

キッチンの稼働率はとんでもないはずだ。

 

ピーク時のマックは修羅場だ、店舗内に群がるお客とuber配達員、その奥でたくさんのクルーが全力で作業していて、ソーシャルディスタンスもへったくれもない。

ファストフードとは言え順番の番号札をもらいしばらく待たなくてはいけない、

それでも来店し店内で飲食する人、テイクアウト、ドライブスルー、デリバリーと

みんなマック大好きで、改めてマックの人気を目の当たりにするのだった。

 

僕が配達をしていて感じる限りでは、

マックの次にリクエストが多いのはKFC ケンタッキーだ。

 

 

これはたまたまそう感じるだけかもしれないが、

マックとケンタは店舗が近いことが多い気がする。

 

 

今回のケンタッキーは自転車を停めるのも手間取るほど狭い立地だったが、

無事ピックアップを済ませ配達に向かった。

 

配達の目的地はマンションでそれほど遠くないように思えたが、

なにせマンションが多く、目的地についたものの目当てのマンションがわからない。

住所はこのあたりなので、ここに見えているマンションの一つとは思いながら、

付近をウロウロ探していると携帯が鳴った。

直感で注文したお客さんだとわかった。

配達をしている時、目的のお客さんにはこちら電話ができるし、逆にお客さんからも配達員に電話でき、メッセージのやり取りも可能だ。 

 

 uber Eatsでデリバリーを利用した人は知っていると思うが、

注文したお客さんはスマホの地図で配達員の動きを確認できるので、配達員が今どの辺りまで来ているとか、迷っているとかがわかる仕組みになっている。

配達員が迷っていたりすると、スマホで配達員の動きを見ながらメッセージで道案内してくれる親切なお客さんもいたりする。

 

このお客さんも、マンションの周りをウロウロするばかりで

いっこうに到着しない僕をスマホで見て電話してきたのだろう。

 

僕は道路端に自転車を止め電話に出ると、男性の不機嫌な野太い声。

第一声は関西弁のツッコミでお馴染みの

『なにしてんねん』 だった。

 

 

 まずい、ご立腹のようだ。一気に緊張が走る。

 

「お待たせしてすみません、近くまで来ているのですが…」

 

『すみませんちゃうわ、わからんのやったら電話せーや』

「申し訳ありません…」

 

『申し訳ありませんちゃうやろ、大通り沿いのマンションじゃ、ボケ!』

そう吐き捨てると男性は電話を切った。

 

《うわちゃ~ めっちゃ怒っておられるやん

     ボケとか言われたし… 凹むわー》

 

《やばい、やばいぞ、速攻もっていかな、大通り沿い言うてたな》

 

僕はすぐに細い路地から大通りにでた。

それらしいマンションがあるもののマンション名が確認できず、

側の店舗で聞いて確認した。

僕はずっとこのマンションの裏手でウロウロしていたようだ。

 

マンションまで辿りつくことはできたが、

まだこのKFCケンタッキーをお怒りのお客様に手渡ししなくてはいけない。

 

《あぁ、すごくイヤだ、めっちゃ怒ってたしなぁ、

        もしかしたらシバかれるかもしれない…》

 

一つ救いなのはあのお客さんが電話で、怒りながらも場所を教えてくれたこと、

極悪人ではないはずだ。

そう願いつつマンション入口のオートロックで部屋番号を押すと

無言で入口ドアが開いた。

 

逃げ出したいほどの虚無感に襲われていた僕にとって

そのドアは地獄への入口のように思えるほどだ。

 

真夏の陽射しの中、汗だくの僕はさらに変な汗を流しながらお客さんの部屋の前で

インターホンを押すと

 

部屋のドアが開き、中から凄く渋い表情の男性がくわえ煙草で出てきた。

僕は商品を手渡し

「お待たせして申し訳ございません!」

謝罪したが男性は無言のまま目を合わせることもなく、商品を受け取ると

部屋のドアは閉じた。

 

 

僕はホセ・メンドーサとの死闘の後の矢吹丈のように真っ白に燃え尽きていた。

マンションを出るとすぐに配達アプリをオフラインにし、

そのままレンタル自転車を返却しにいっていた。

 

それはまるで大都会に憧れ、夢を抱いて上京したものの

上手くいかず挫折し帰郷する地方出身者のように、

僕は大きなカバン(ウバック)を背負い、逃げるかのように

地元に向かう列車に飛び乗っていた。

 

挫折と敗北感は味わったが貴重な経験ができたことは間違いない。

そんな大阪中央エリアでのトライアルだった。

 

 

 

余談ではあるが、その日僕の配達アプリの満足度は100%から99%に落ちていて、

初めてのダウン👎評価が一つ付けられていたが、これは匿名で行われ、

秘密情報として扱われるため、誰が評価したのかはわからないことになっている。

 

 

 

 

            都攻略編  完