金時日記

日々の感動を書き綴る

 沈黙の住人 ③

 

しばらくして、おあつらえ向きの安マンションが見つかった。

引越したからと言ってそこが理想の住まいである保証はどこにもない、私は宅配の仕事をしているので、あちこちと集合住宅にも訪れるが、どこでも掲示板やエレベーターとかの目に付くところに生活騒音に対する苦情や注意書きが貼られているものだ。

それは安アパートであろうが高級マンションであろうが関係ない。

 

私が引越すマンションは家賃も安いうえに初期費用もかからない。もちろんそれに惹かれて決めたのだけど、それに見合った「何か」はあるだろうという懸念はあった。

 

部屋はいたってシンプルなワンルームで、ユニットバスと洗濯機の置けるベランダがあり、4階建ての4階になる。今まで2階だったので、上にならどうだろう、上に部屋がなければ、上階の騒音はないとは思うのだが。

引っ越しは一人でぼちぼちやるつもりでいたが、エレベーターのない4階となると少し覚悟がいる。この部屋には「前住人が置いていった」らしい冷蔵庫、洗濯機、テレビがあり、まだ使えるので使かって構わないという。4階まで持ってあがるのが厳しい家電だったので、使わせてもらうことにした。

 

とにかく引っ越しにお金を掛けたくなかったので、業者を頼まないのはもちろん、手伝いを頼める友人も知人もいないので、ひとりでやることを前提に、今の住まいの退去日と引っ越し先の入居日を調整し一週間の引っ越し期間を設けた。

これなら雨の日があっても大丈夫だろう。

一番のネックだった洗濯機を運ばなくてよくなったことで大方の算段は立った。

今使っている洗濯機はネットのコミュニティサイトで4000円で買った物だが、同じサイトで2000円で売って処分できた。

 

引っ越し先は今の場所から車で20分ほどの距離だが、トラックも借りず自家用車で積めるだけ積んでマイペースで荷物を移動させた。

時間をかければ一人でもできなくないことは証明できたが、大変であることには違いない。

荷物を運べばいいわけではなく、住所変更の手続きも役所だけではない、電気、水道、ガス、郵便、免許証、口座、電話、通信関係、各種カード‥そう頻繁に行う行事ではないので、すごく学べる経験ではある。

 

そうして引っ越しもなんとか完了させ、ここでの生活を始めるのだが、まず気になるのはお隣さんで、かと言って改まって挨拶に伺うつもりはなかったし、そのうち顔を合わせた時でいいかくらいに構えていた。

 

まず目についたのは右隣の部屋だが、今時珍しく玄関先にネームプレートが貼られていたからだ。しかも英字で、どこの国の人かはわからないが、日本人ではないようだ。

 

外国人かぁ、生活様式が違ったりして、騒がしいとかはないだろうか、とても心配ではあった。

 

しかし私の嫌な予感は的中することとなる。

 

 

 

 

 

 

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